吉川町まちづくり基本条例、提案理由の説明
(町議会住民自治に関する調査特別委員会委員長橋爪法一)


 それでは、私の方から、吉川町まちづくり基本条例をつくるに至りました経過と条例の概要、条例制定の意義について申し上げまして提案理由とさせていただきます。

 まず経過でありますが、出発点は平成13年3月議会でした。 この議会において、地方分権地代に対応した自治体運営を推進していくためにどうするかが議論されまして、当時、全国で唯一、まちづくり基本条例を制定していた北海道ニセコ町のことが話題になりました。

 そして同年8月、当町の議員全員で北海道ニセコ町にでかけ視察研修をしました。 そこでは逢坂ニセコ町長のまちづくりに対する考え方と熱い思いが全議員の胸を打ちました。当議会としても、まちづくり基本条例を制定していかなければならない。研修を終えた全議員の気持ちは1つになっていました。そして同年の9月議会において、議長を除く全議員の調査特別委員会を設置することとなったのであります。

 その後、1年6ヶ月あまりの間に、16回の調査特別委員会を開催してきました。中央大学前教授、辻山幸宜さんからは二度も来町していただき、まちづくり基本条例とは何か、基本条例に盛り込むべき内容などについて専門家としての立場から実践的なアドバイスをしていただきました。辻山さんからのレクチャーについては、町職員のみなさんとの合同研修という形で受けました。

 本条例の策定過程では、議会として初めての取り組みが3つありました。

 1つは、いまほど申し上げたように大学教授を委員会の調査活動の場に招いたことです。

 2つ目は、議会の委員会の調査活動でワークショップを初めてとりいれたことです。条例の策定に向けて全委員が自らの思いを自由に伸び伸びと語り合った経験は、その後の作業をすすめるうえで大きな力となりました。

 3つ目、本年2月16日、23日に開催した町議会の地区別懇談会も議会として初めての取り組みでした。これまで町議会がこうした懇談会を一度も開催したことがなかったこと事態、不思議ですが、町民の皆さんのご意見、ご提言はとても新鮮でした。

 懇談会で出された町民の皆さんの多様なご意見、ご提言は、まちづくり基本条例にいのちを吹き込むことになりました。また、こうした懇談会が議会の活性化にもつながることが理解でき、貴重な経験となりました。(なお、この懇談会開催に関連して「議会だよりよしかわ」特別号を2回発行している。これも初めてだった)

 また、まちづくり基本条例制定過程では、行政側もプロジェクトチームをつくりながら誠心誠意、取り組まれ、独自の提案をしていただきました。条例本文を読めば分かるように、行政側のプロジェクトチーム案が条例の随所に反映しております。

 本条例は、議員提案ではありますが、議会と町民の皆さん、それに行政側の皆さんとの3者の協働の中から生まれたものであることはまぎれもない事実であります。この条例を提案するにあたり、町民の皆さん並びに行政側の皆さんの「まちづくり」に対するご理解とご協力に心から感謝申し上げます。

 次に、条例の概要につきまして申し上げます。

 この条例は、前文と本文13章、附則で構成されています。

 前文は、町の自然、民主主義の伝統、条例制定のねらいを簡潔に記述しました。

 第1条は目的です。ここでは、住民自治の担い手が住民であることを明確にし、「住民、議会、町がともにまちづくりを推進するための基本的事項を定めること」を目的にしました。

 第2条は、用語の定義です。本文に「まちづくり」という言葉が繰り返し出てまいりますが、第5条でその内容を理解していただけることから、あえて定義付けをしてございません。

 第3条は、「この条例の位置付け」です。この条例が最高位の条例であることをはっきりさせました。

 第4条は、「まちづくりの基本理念」です。「住民が主役となったまちづくり」「住民、議会、町がそれぞれの責任と役割を分担し、協働する」。ここがポイントになります。

 第5条は、「まちづくりの基本目標」です。「環境にやさしく、豊かな自然環境と歴史・文化を大切にするまちづくり」など5つにまとめました。

 第6条から第9条までは、「まちづくりの基本原則」です。男女共同参画、子ども参画、情報の共有、協働、これらの4つの原則は今後のまちづくりのキーワードとなってまいります。

 第10条・第11条は、住民の権利、役割、責務を、第12条・第13条は議会の役割と責務を、第14条から第18条までは、町長及び執行機関の役割と責務をまとめたものであります。

 第19条・第20条は総合計画などまちづくりの計画策定について定めたものです。第20条では、いわゆるパブリック・コメント制度を導入しました。

 第21条・第22条は、情報についての基本事項をまとめてございます。「情報はみんなの財産」という捉え方がこれからの時代、大切になります。

 第23条・第24条は評価についてです。内部だけでなく、外部評価を含めた評価方法の検討、結果の公開についてふれています。

 第25条から第28条までは財政管理の基本事項についてまとめてございます。

 第29条は、住民投票の規定です。当町における新たな自治の仕組みの1つとして盛り込みました。これらの規定により、18歳以上の住民が「吉川町にかかわる重要事項で」住民投票をする道が開かれました。ただし、住民投票を具体的なテーマで実施するには、個別の住民投票条例が必要となります。

 第30条から第33条までは、まちづくりにおける町外の人たち、近隣自治体などとの連携についてふれています。

 第34条は、「この条例の検討、見直し」についてふれています。この条例は、自治基本条例の1つとして、住民が主役のまちづくりをすすめていく基本を定めたものですが、まだまだ弱点、未熟の点があろうかと思います。それらを一定の期間ごとに検討し、よりよい条例へと成長させていく意思をここで明記しました。

 附則ですが、施行期日につきましては、この条例の周知期間、関連条例の整備などを考慮し、平成15年10月1日からの施行といたしましたので、ご理解願います。
 以上が、本条例案の概要であります。

 次に、本条例制定の意義について若干ふれておきたいと思います。 ご案内のように、地方分権推進法では、「地方公共団体の自主性及び自立性を高め、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現を」(同法第2条)求めています。また改正地方自治法でも、「住民に身近な行政はできるかぎり地方公共団体にゆだねること」「地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにしなければならない」としています。

 こうした中で、まちづくり基本条例を制定することは、(条例が)まちづくりのこれまでの成果や到達点を踏まえたものになるならば、自治体としての自主性及び自立性を強化し、個性ある発展につながっていくものと確信します。

 今回、当町のまちづくり基本条例においては、総合計画の策定や集落懇談会などで積み重ねてきた住民参画の伝統を重視するとともに、男女共同参画、子どもの参画、情報共有、協働を前面に出しました。これが実践的に取り組まれるならば、当町のまちづくりは飛躍的な発展をとげることと思います。

 また、全国的に見ますと、まちづくり基本条例を制定した自治体はまだ10に満たない状況ですが、当町の条例は、全国で初めて議員提案で制定するまちづくり基本条例となりました。今回の制定は、まちづくり基本条例の制定をめざしている全国の自治体関係者に勇気と希望を与えるものとなるはずです。

 終わりに、吉川町の更なる発展を期待しますとともに、私としましても議会の役割と議員の責務を自覚し「住民が主役のまちづくり」に邁進することをお誓い申し上げ、提案理由の説明とさせていただきます。ありがとうございました。


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