2006年3月議会一般質問
◆1番(橋爪法一議員)
 吉川区選出の橋爪法一でございます。皆さんのおかげで吉川区は、ことしの1月からケーブルテレビジョンが入りました。きょうは、恐らく私の父も母もこの議会中継を見ていると思います。親というのは非常にありがたいもんで、私のように幾ら年をとっても心配なんです。そして、教育の対象です。この間母が言いました。「いいか、今度市長さんに会ったらちゃんと頭下げろや」と。いや、参りました。私は、そういう親の思いを大切にしながらきょうは三つの問題について市長にお尋ねしたいと思います。一つは、過疎対策です。二つ目は、肺炎球菌ワクチンの接種の問題です。そして、三つ目は、農業振興です。
 一番最初に、過疎対策について取り上げたいと思います。実は合併の前から合併したらどうなるかということで14市町村の住民はいろいろと心配してきました。賛成の人も反対の人も共通して心配していたことが三つございました。一つは、サービスが低下するんではないかという心配です。二つ目は、役場が、今総合事務所になりますけども、編入される地区の住民にとって役場が遠くなるんではないかと、そういう心配がありました。そして、もう一つは、高田や直江津の中心部だけ栄えて周辺部はどんどん廃れていくんではないかと、こういう心配があるんです。あったんです。それで、今回はその周辺部の中でもとりわけ山間地に住んでおられる皆さん方の願いを私は最初に取り上げることにしました。
 二つ伺いますが、一つ目は限界集落の現状認識と今後の施策の方向についてであります。限界集落というのは、65歳以上の皆さん方が一つの集落で50%以上を占めている集落を言います。これは元高知大学の教授の大野晃さんという方が最初に使った言葉なんですけども、旧国土庁や今の政府もみんな使っています。そして、集落において55歳以上の人口割合が50%を超えたときには準限界集落と言うんです。この間市役所の職員の皆さん方に調べてもらったら随分ありました。823ある中で49限界集落があるそうです。準限界集落は220もあると。
 今ここに一つ写真を用意したんですが、市長さんにはもう渡してありますが、余りよそのところの話をすると怒られますので、自分のところの写真を持ってきたんですが、遠くの方は見えるでしょうか。私の大好きなふるさと、尾神岳の写真です。この写真は、恐らく昭和60年前後に撮られた、空から撮った写真だと思うんです。宮崎駿監督の「天空の城ラピュタ」、あの雰囲気のある写真なんですが、改めて見てみますと非常にきれいな棚田がたくさん見えます。もう既になくなったうちもちゃんと写っています。棚田については、もう牧とか安塚に負けない棚田があったんです。ところが、今もうこういう姿はありません。尾神岳のこの周辺にあった集落、今ある集落はどうなっているか。一番北側に南黒岩の集落があります。柿崎区です。その柿崎区の南黒岩31人今お住まいですが、19人が65歳以上のお年寄りで、率にして61.29%です。それから、すぐその隣に東横山という中村部長さんのふるさとがありますけど、そこは11人中9人で81.82%です。すぐその隣に旭平というとこありましたが、もう消滅しました。そして、その隣が坪野という集落で、今58人中32人、55.17%であります。そして、私が少年時代、青年時代を過ごした尾神という集落は現在61人住んでおられまして、35人が65歳以上、57.38%。私の住んでいたうちからちょっと離れた下の集落に半入沢というとこあったんですけど、そこも消滅しました。そして、昨年いろいろ話題になった川谷、下川谷につきましては25人中17人が65歳以上、68%です。こういうところで一体どういう問題が起きているか。やはりお年寄りの皆さん方が大勢ですので、体力が落ってくる。道普請や江ざらいができにくくなってきたと。集落の行事も余りやるには大層になってきていると。集落の機能を維持できなくなってきているんです。そういう問題がございます。市長にはこうした現状をどのようにとらえられておられるのか、そして今後どういうことをやっていこうとされておるのか、そこら辺をまずお尋ねしたいと思います。
 過疎対策で二つ目にお尋ねしたい問題は、冬期保安要員の見直し問題です。既に御案内のように、県の方では昨年の11月にこれまでの県の冬期保安要員制度を見直すということを明らかにいたしました。その見直しによりますと、保安要員を置ける集落というのは非常に限定されまして、過去3年間の間に2日以上孤立したとか、あるいは集落内の道路の除雪、圧雪の区間が1.5キロ以上であるとか、非常に狭められちゃったんです。そういう中で3カ月、4カ月経過したんですが、20年ぶりの豪雪でしょう。そこで、山間部の皆さん方はこの冬期保安要員は改めて大事だということをわかって、県にもいろんな声が届いているそうであります。そして、2月7日には県が再度関係市町村に通知を出して、もう一度見直すから意見を上げてくれと、こういうことになっています。そこで、市長さんからはこの通知を受けてどういう対応をされようとしているのか、そこら辺を明らかにしていただきたいと思います。
 二つ目の質問に入ります。二つ目の質問は、肺炎球菌ワクチン接種についてでございます。実はこの質問をするきっかけになったのは、一つの新聞記事でございます。昨年の3月15日付の読売新聞の記事たまたま目にしました。ちょっとだけ御紹介させていただきたいと思います。北海道の瀬棚町というところがあるんだそうですが、「健康へのデザイン、瀬棚町の挑戦、肺炎ワクチン初の公費補助。函館から国道で130キロ。漁業と酪農業の小さな町(人口2,700人余)が「今予防医療のモデル」として全国の注目を浴びつつある。町が一躍名をはせたのは2001年。日本では埋もれていた肺炎球菌ワクチンに着目し、65歳以上の住民への全国初の公費補助に踏み切ったのだ。高齢者がインフルエンザにかかると4人に1人が肺炎に進む。一昨年は国内で9万4,942人が肺炎で死亡した。ほとんどが高齢者で、原因は肺炎球菌が一番多い。だが、慢性肺疾患の高齢患者にインフルエンザと肺炎球菌の両ワクチンを打つと、入院を63%、死亡は81%減少させると海外報告にある。瀬棚町は人口の29%が高齢者。大規模な風力発電をしているほど強風が吹き、冬場は家に閉じこもりがちだ。そこで町は接種料5,530円のうち2,030円を負担し、普及を目指した。瀬棚町医療センターの所長の村上さんは、「肺炎になれば治療に1人25万円かかる。ワクチン補助で100人に1人、高齢者の肺炎予防ができれば採算が合う」と町を説得した。同時に、全町民にインフルエンザワクチンを1回1,000円で接種できるようにした。「肺炎は予防できる」と職員は住民に解いて回った。それから4年。肺炎は減り、今では年に数人がかかる程度。さまざまな予防医療が功を奏し、町の老人医療費は半減した」とあります。
 こういう記事を読んで非常に私感激したんですが、これも市の保健師さんからいろいろ調べてもらいましたら、上越市の肺炎で亡くなる方の多さ、これもわかりました。今最新のデータで平成15年度のデータしかないんですが、1位は悪性新生物なんですけども、肺炎で亡くなられた方が127人だそうです。過去のデータと比較しますと、なかなかこの肺炎で亡くなる方が減っておらないというような状況でございますが、保健師さんの説明によりますと肺炎球菌というのは80種類以上あるんだそうです。それで、この肺炎球菌ワクチンを接種しますと、23種類の菌に免疫をつけることができるんだそうです。そして、肺炎球菌による肺炎の8割に効くということでした。こういうことを聞きますと、これはぜひやっていただきたいなと思うんです。そこで市長にお尋ねしますが、肺炎球菌ワクチン接種の公費の助成制度をつくって高齢者などへのワクチン接種を働きかけていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 最後の問題に入ります。農業振興です。農業振興についてはこれまで何遍か質問させてもらいましたが、昨年の6月の時点で私は上越市の食料・農業・農村基本条例の話をさせてもらいました。あれ今も読んでいます、私。平成12年の3月24日に制定された条例です。きょう同じ日なんです。私の誕生日もきょうなんですが、この条例は本当に読めば読むほど味わいがあってすばらしいです。
 幾つか魅力がありますが、一つはこの自治体の中での自給自足といいますか、農産物の自給率を高めることを目標に掲げて、具体的な数字まで挙げてやるようなものになっている。そういう基本が書かれている。これはすばらしい。それから、環境に配慮して循環型の農業をやっていきましょうと、持続可能な農業をやろうと、これもはっきりと打ち出している。そして、3番目にすばらしいと思ったのは、国や県と連携すると同時に、国や県にも場合によっては提案をしていく、意見を述べていくということをこれ本文にちゃんとうたってある。これもすごい。そして、最後は担い手の問題です。担い手について、多様な担い手の確保について、認定農業者のみならず多くの意欲ある農業者を育てていこう、その立場に立っていると。これはすごいと思うんです。
 そういう私がすばらしいなと思うこの条例に基づいて、私は通告いたしました四つのことについて市長に伺いたいと思うんです。一つは、昨年の11月に国、農林水産省が発表しました新たな農業新施策です。それを見ますと、私は正直言ってこの上越の条例に照らしてみてもちょっとおかしいよというものが幾つかある。例えば日本農業を危機に追い込んだこれまでの政府の責任は全く棚上げにしております。それから、国際的に孤立を深めているWTOの協定をこれ絶対視しています。そして、輸入自由化を推し進めて国際競争力に勝てない農家を切り捨てるというふうにはっきりやっています。こういう問題がある。そういう中で今これが本格的に進められますと、全国の農家の担い手として認められる農家は、農業者は約1割になってしまうと。国の新たな支援政策の対象となる農地も6割どまりで、残りの4割はもうお構いなしになってしまうと、こういう状況になります。この新たな政府、農林水産省の方針を市長はどう受けとめて、この間パブリックコメントに出されました上越市の食料・農業・農村基本計画改定案、これをどうまとめたのか、これをお聞かせいただきたいと思います。
 それから、2番目にお尋ねしたいのは、私が一番最初に言いましたこの条例を今の時点でどう評価するかです。私がさっき褒めましたように、平成12年なんていうと合併前の条例でございます。今14市町村が集まって、新たな市域の中でこの条例が今作用していると、そういう状況でありますが、私は合併前のみならず合併した後の上越市にも十分通用する条例だという評価をしています。市長がこの点でどういう評価をされているのか、明らかにしていただきたいと思います。
 それから、3番目にお尋ねしたいのは、上越ブランドの確立どう実現するかという問題であります。一般質問でも何人もの議員さんがこの問題をを取り上げられまして、議論が進んでまいりました。仲田議員の質問と、あるいは小林議員の質問によって、上越ブランドの切り口になっていくのは米だというところまではっきりしてまいりました。その米でどうやってよその地域で生産されておる米と違いをつくっていくか、これが今問われています。特に全国的に評判になっている魚沼の米と上越の米どういうふうに差をつけるかと、これ難しいです。この間文教経済常任委員会でいろいろ議論があって、栽培指針を統一してつくって、上越全域の米作の農家の皆さん方からやっていただくという話もありました。それから、認証制度をつくるというような話もありました。それはそれでいいんですが、仮に栽培指針等をつくって統一したものを皆さんにお願いしても果たしてよその米と差別化できるか。なかなか難しい。私は、差別化をできる決定的な要素というのは味だと思います。うまさ。魚沼の人たちが米のうまさを言うんだったら、上越の米はうんまいと、そういうふうに言えるようなものをつくらんきゃならんと思いますけども、そのために必要なのは、私はやはりこの上越の広い農地の中でみんなが努力して本当にうまい米をつくる。余りおいしくない米はできるだけ出荷を控えるぐらいのことをやっていかないとなかなか評判はとれないと思うんです。消費者の皆さんから、上越の米なら間違いなくおいしい、そして安心できるという、そういう状況にならないとブランドにはならないと思うんです。私は、そういう点では米の売り方だって工夫をしていく必要があると思います。例えば一つの袋に30キロ米を入れて売るにしても、どういう米かというのがはっきりわかるような宣伝をする必要がある。だれがつくったかということで写真を張ったっていいじゃないですか。私のような顔を生産者としてぱんと張っていけば、写真を見ただけでほっとすることになるかもしれません。そういったような工夫が当然必要ですし、それからどんなところでつくっているかということもやっぱり言わんきゃ。そういう努力もする中で初めてブランド化ができるんだと思います。そこら辺市長の見解を求めたいと思います。
 そして、4番目に市長にお尋ねしたいのは、多様な担い手の育成、確保の問題であります。今パブリックコメントに出されている計画改定案を私つぶさに読ませていただきました。読んでみて一つがっかりした問題がございます。基本条例の本文に書かれている多様な担い手の育成、確保の方針とずれたものが載っている。そのことをはっきり指摘したいと思います。どこでどんなふうに載っていたのか。今私の手元に「上越市食料・農業・農村基本計画の見直しのポイント」というのがあるんですけども、その多様な担い手の育成、確保の推進というところで、「目的は、地域農業を担う意欲的な農業者や農村を守る多様な農業者を育成、確保する」と。そうはなっているんだけども、施策の部分の記述は完全に政府、農林水産省が言う要件を満たしたそういう担い手だけ育てると、これしか書いていないんです。この間委員会でこの話をちょっとしたらいろんな意見も出てきたんですが、昨年の12月議会で武藤さんの再質問を思い出していただきたいと思います。非常にいい質問をされました。武藤さんの質問の中で、認定農業者今821人おられるんだそうですけども、今回のこの新たな政策で漏れる人が421人いるんです。そういった人たちをどうするかという問題がある。意欲がある農業者ということでみんな認めたんです。認めて行政が支援していかなきゃなんない。そういう状況にありながら、残念ながらそこの要件満たせない421人については、できるだけ要件を満たすようなところへ頑張って拡大しなさいという、それしかないというんじゃちょっと寂しいです。ここら辺しっかりと市長の考え方をお聞きしたいと思います。その上でまた再質問をさせていただきます。
◎木浦正幸市長
 最初に、過疎対策についてのお尋ねにお答えいたします。
 まず、限界集落の現状と今後の施策の方向について聞きたいとの御質問であります。私としては、このたびの議員の御質問により、中山間地においては過疎や少子高齢化という問題にとどまらず、将来における集落の存続危機という総合的な問題、いわゆる限界集落としてとらえていかなければならないと改めて認識をいたしたところでございます。私は、過疎や少子高齢化を見据えたまちづくりについてはこれまでも市政の重点施策の一つとして位置づけ、鋭意取り組んでまいったところであり、特に中山間地域の振興を図るものとして農業を初めとする各種支援施策や観光交流施設の整備等によりまずは交流人口をふやしていきながら、最終的にはいかに定住人口の増加につなげていけるかが大変重要な問題であると認識をいたしておりますが、集落単位の存続そのものに視点を置いた検討についてはあるいは十分ではなかったところであり、今後そのような視点もあわせ十分な現状分析と将来予測のもとに総合的な施策や事業を検討してまいりたいと存じます。そこで、これまでの中山間地域全体のための施策に加え、個々の集落においては防災や災害時の対応という極めて重要な視点から、集落、すなわち地域コミュニティーとして存続していくために必要な戸数の維持という具体的な対策も必要であると考えておりますので、例えば団塊の世代のU、Iターンが期待されるいわゆる2007年問題とも結びつけていくなど各種施策との連携や整合を図りながら検討を進めてまいりたいと思っております。いずれにいたしましても、中山間地域における限界集落の問題についてはまずは早急に実態を把握し、具体的な施策の検討につなげてまいりたいと考えております。
 次に、県の冬期集落保安要員制度見直しにどう対応するのかとの御質問にお答えいたします。冬期集落保安要員設置事業は、昭和50年度に県が創設した補助制度で、当初は冬期間の雪で交通が途絶する地区を対象に、また道路除雪が行き渡るようになってからは過疎化や高齢化により集落機能の維持に支障を生じている地区などを対象に、住民の安全確保と生活環境の維持、向上を図るため、専任の要員を配置するものであります。当市では、今年度合併前の上越市に県補助により2地区3名、また吉川区に市単独費により1地区2名を設置し、地区内道路の除雪や要援護世帯の住居の除雪などを行っていただいていることは御案内のとおりであります。また、この間昭和59年〜61年までのいわゆる3年豪雪を受け、昭和63年度に補助対象地区の要件の拡充が図られたものの、道路整備や除雪路線の延長と暖冬少雪が続いたこともあり、本事業はおおむね縮小の方向で関係市町村との調整、見直しがなされてまいりました。現在の設置要件は、1、県土木部指定の孤立集落。2、過去3年間で降積雪、雪崩等により2日間以上交通途絶となった集落または集落内の圧雪区間延長がおおむね1.5キロメートル以上の集落。3、世帯数がおおむね50以下で、かつ集落の老年人口比率が特別豪雪過疎市町村の平均老年人口比率を上回る集落で過疎化の進行等により特に冬期間の生活環境や集落機能の維持に支障が生じていると市町村長が認める集落となっておりますが、昨年11月に県から通知があり、平成18年度以降はおおむね第2の要件に相当する集落の入り口までは除雪路線であるが、雪のため交通が途絶する集落または集落内道路の未除雪区間が相当ある集落に限定する方針が示されておりました。しかしながら、このような経緯の中、県では今冬の豪雪などの状況を踏まえ、本事業の有効性、必要性を再評価し、平成18年度の降雪期までに制度内容の再検討を行うこととなり、新年度の県予算成立後に当市など関係市町村から意見を聴取したいとの連絡があったところであります。市といたしましては、県に対して市単独費で対応している地区を含め、少なくとも現在冬期集落保安要員を設置している地区すべてを補助対象として引き続き事業の継続を要請することは無論のこと、過疎化や高齢社会の現状、さらには地域づくりの視点を踏まえた冬期集落保安要員の設置要件のあり方などについて強く要望、提言してまいりたいと考えております。担い手の確保などの現実的な課題も存在しておりますが、いずれにいたしましても仮に将来に県が補助事業の見直し、廃止等を行ったとしても、現在設置している地区において引き続き設置が必要であると判断される場合は市単独による予算を確保し、事業の継続を図ることも必要と考えております。
 次に、肺炎球菌ワクチン接種について、公費補助制度をつくり、高齢者などへのワクチン接種を働きかけるべきだと思うが、考えを聞きたいとの御質問にお答えいたします。肺炎は、細菌やウイルスの感染などによって肺に炎症を起こす疾患で発熱や呼吸困難などの病状があらわれ、死に至ることもあります。一般的には、体力が落ちたり、高齢になって免疫力が弱くなったりするとかかりやすくなると言われております。肺炎による死亡者は、厚生労働省の人口動態統計によりますと、ここ数年、がん、心疾患、脳血管疾患に次いで第4位と高い死亡原因となっております。また、肺炎のうち40〜50%は肺炎球菌による感染と言われており、肺炎球菌による感染症の予防として日本では昭和63年に肺炎球菌ワクチンの輸入、市販が開始され、予防施策の一つとされております。しかし、この肺炎球菌ワクチンは予防接種法に規定された予防接種ではなく、任意の予防接種であり、接種を受ける人と医師の責任と判断で行われております。また、国の予防接種ガイドラインでは、この肺炎球菌ワクチンの接種対象者は65歳以上の高齢者、心血管系、呼吸器系、糖尿病などの慢性疾患を有するなど免疫不全を伴う人、また2歳以上の脾臓摘出患者などの免疫不全を伴う人などとなっております。ワクチンの免疫は5年間程度持続すると言われておりますが、追加接種による副反応が懸念されるため、日本では再接種ができない、いわゆる生涯1回の接種が原則となっております。このため目下のところ肺炎球菌のワクチン接種は、主に今ほど申し上げたようなハイリスクな疾患を有する患者に対して治療過程において必要に応じ行われているのが現状であります。議員御指摘のとおり今後ますます高齢社会が進展する中、高齢者の安全、安心を守る意味から肺炎球菌による肺炎を予防することの重要性は十分理解できるところであります。また、医療費の抑制などの面からも検討に値する課題であると考えております。しかしながら、平成11年7月の厚生労働省予防接種問題検討小委員会の報告書では、肺炎球菌性肺炎は将来的には予防接種法の対象疾患として位置づけることも検討すべきと考えられるが、その前提としてワクチンの有効性、安全性に関する調査、患者数の把握を行っていくことが重要であると報告されており、昨年3月の予防接種に関する検討会の中間報告書でも有効性、安全性、費用対効果等の研究を進め、さらに知見を収集することと報告されております。このことから公費補助制度の創設などに当たっては、ワクチンの有効性や安全性の面など国の予防接種対策の動向をいましばらく見守る必要があるのではないかと考えており、その上で総合的に検討してまいりたいと考えております。
 次に、農業振興についてのお尋ねにお答えいたします。まず、昨年10月、政府、農林水産省が明らかにした経営所得安定対策等大綱をどうとらえ、上越市食料・農業・農村基本計画の改定案を策定したのかとの御質問であります。御案内のとおり現行の上越市食料・農業・農村基本計画は平成13年に策定し、今年度で前期5年が経過するとともに、13町村と広域合併した上越市農業にふさわしい新たな計画へと見直すこととして改定作業を進めてきたところであります。これに先立ち、国は昨年3月に改定した食料・農業・農村基本計画の中で農業政策の大転換を明記しており、その具体策として10月に経営所得安定対策等大綱を発表したものであります。市といたしましては、国の農業政策の大転換を重く受けとめ、今回の基本計画の改定ではその動向に関する情報収集に努めるとともに、政策などを十分に反映するよう心がけ、上越市食料・農業・農村政策審議会にお諮りし、計画案を策定してまいりました。計画案には具体的に今後10年間で取り組むべき基本的な施策に優先度をつけて掲げたところであり、中でも前期5年間で最も優先すべき施策として国の施策に対応できる認定農業者や集落営農の法人化など担い手の育成、確保を初め近い将来に予想される米価の下落に耐え得るための農産物のブランド化とその基礎となる食の安全、安心の取り組み、推進などを掲げております。そして、農業生産基盤であります農地、水、環境保全の取り組みにつきましてもしっかりと位置づけたところでございます。
 次に、上越市食料・農業・農村基本条例を現時点でどう評価しているのかとの御質問にお答えいたします。当市の食料・農業・農村基本条例は、平成11年に施行された国の食料・農業・農村基本法を受けて平成12年3月に制定し、4月から施行されたものであります。上越市農業の目指すべき基本理念として、食料分野では地域内自給を基本とした環境と調和のとれた安全な食料の安定供給の確保を、また農業分野では農業の自然循環機能の維持、増進を図ることを通じた農業の持続的な発展を、そして農村分野では多面的機能の発揮を通じた生産、定住、交流の場としての調和のとれた空間の整備を条例に掲げておりますことは御案内のとおりであります。条例を施行して6年が経過しようとしており、この間地域農業を初めとする農業を取り巻く環境は、高齢化や過疎化の進展、それに伴う後継者不足と耕作放棄地の拡大など一段と厳しさが増しつつある中にあって、さらにWTOにおける農業のグローバル化やそれに伴う国の農業政策の大改革の波は確実に押し寄せてきております。そのような状況下にあっても当市の条例は国が示す方向性や地域農業が目指すべき姿と整合性が保たれている内容になっており、当市の農業施策の指針としての地位に何ら変わりないものであると考えているところであります。もちろんこのたびの基本計画の改定に当たりましても条例の基本理念の実現に向けた方向性や基本的な施策、さらに目指すべき将来像も新たに掲げたところであります。そして、年度ごとの個別の施策と目標を掲げたアクションプランを策定し、実効性を担保しながら上越市農業の着実な振興につなげてまいりたいと考えているところでございます。
 次に、上越ブランドの確立はどうすれば可能になるのかとの御質問にお答えいたします。当市の農業総生産額の約8割を米が占めており、その約7割がコシヒカリでありますように、当市の農業構造は稲作に特化しております。このことは、当市の気候風土と土壌が稲作に適した条件にあることでもあります。その上越産米は上位等級比率におきましても全国ブランドであります魚沼産米と肩を並べるほどの実績を上げており、このことはひとえに生産者の皆さんのこれまでのたゆみない努力のたまものであります。また、適期移植など地域全体での統一した取り組みや農薬の低減に向けた自然環境に配慮した各種取り組みの成果でもあります。それはJAえちご上越に集荷された上越産米の約7割が卸業者との結びつきにより販売先が決まっており、均一化された高品質な米を安定的に供給していることで安心感を与え、信頼関係が確保され、高い評価をいただいているとお聞きいたしております。一方、残念ながら一般消費者に向けては新潟一般コシヒカリとして販売されておりますことから、上越産米の知名度が浸透されないままに消費されているのが現実であります。これまではこのような現状であっても生産者の皆さんの農業所得の確保と経営の安定、さらには地域農業の維持、継続は保たれてきたところであります。しかし、先ほども申し上げました日本農業の大改革の波に何も策を講じないままに巻き込まれたとき、農業をなりわいとして生計を立てておられる農業者を初め上越市農業が受ける影響ははかり知れないものがあります。そこで、今こそ地域全体が共通に危機感を持ち、他産地との差別化を図る当市ならではの生産体制を整え、たとえ他産地の米の価格が下落したとしても上越産米は少なくとも現状の価格を維持し、安定した販路が確保されるようにしなければ生き残ることはできません。そのためにはまずは地域全体が統一した基準に基づく減農薬、減化学肥料栽培等の特色ある生産体制を確立し、他産地との差別化を図る必要があります。そして、このことを消費者や卸、小売店などへPRすることで確固たる販路と新たな顧客の開拓を進める必要があります。このことから18年度では、土壌分析や圃場の実態、認証制度や表示方法、さらには米の消費動向などの調査研究を行い、消費者から期待され、求められる米づくりの指針を模索するとともに、効果的なPR方法などを検討してまいります。いずれにいたしましても、上越市農業を守っていくためには産地間競争に勝ち続けるだけの上越米のブランド力をつけることが肝要であると考えているところでございます。
 次に、多様な担い手の育成、確保に向けての基本姿勢をどう考えているのかとの御質問にお答えいたします。既に御案内のとおり、国の経営所得安定対策等大綱では、新たに平成19年度から導入される品目横断的経営安定対策により、従来行われていた米や大豆などの個別品目ごとの価格政策から対象を一定の面積要件を満たす認定農業者や集落営農組織などの担い手に絞り、その経営全体に着目した所得政策へと大きくさま変わりすることになります。このことは、WTO農業交渉も見据えた中で産業として成り立つ強い農業経営体をつくり出すために国が打ち出した施策であります。平成19年度までに残された期間は1年余りでありますが、この機会に集落内の農地をだれがどのようにして守っていくのか、集落の農業を継続する農業経営体を目指してしっかりと話し合いを進めていただけるよう市といたしましては関係機関や農業団体等と一丸となり、担い手の育成に努めているところであります。その手法として、個別経営体の育成と集落営農による組織化、法人化を推進するため、集落の立場に立った担い手育成への指導、助言を行っており、これまでのところ平成18年度中に法人化等を目指す意向の集落が全市で40を超える状況であります。一方、本来多様な担い手で構成されるコミュニティーの上に成り立つ地域農業では、農道や水路等の維持管理を初め農地や環境の保全のほか、食料自給の向上を図る意味でも飯米農家や小規模農家の皆さんも重要な役割を担っておられます。そこで、国は大綱の中で非農家の方々も含めた地域のすべての人々が共同で取り組む活動として農地・水・環境保全向上対策を位置づけ、推進しようといたしております。これは環境を基軸として農村地域の保全と振興を図るものであり、極めて重要な施策であると認識いたしているところでございます。いずれにいたしましても、産業として成り立つ農業経営体の育成が急務でありますので、産業施策として担い手に集中した支援を行ってまいりたいと考えております。その上で農地・水・環境保全向上対策につきましても重要な農村振興施策として位置づけ、地域全体での取り組みや活動を支援するなど産業施策と農村振興施策を車の両輪に据えて農村地域を守るための多様な担い手の育成、確保を図ってまいる所存でございます。
 以上でございます。
◆1番(橋爪法一議員)
 幾つか再質問をさせていただきます。
 1番目の過疎対策の問題につきましては、恐らく関係集落の皆さん方今ほどの市長の答弁を聞いて喜ばれたと思います。合併して本当に山間部のところが一番置いていかれるんではないかというふうに思う人は随分おったんです。そういう中で限界集落に市が本格的に目を向けて調査をしていくという姿勢を示されたことについては私は大歓迎です。ぜひやっていただきたいと思います。この限界集落といったときに一番大きな問題になるのがやはり冬の暮らしです。たくさん雪が降って豪雪になったときに本当に今住んでいるところで暮らしていけるんかどうかという心配が一番強い。それだけに私は冬期間の雪の対策を強めることが限界集落にとっては非常に大事な要素の一つだと思います。その点でぜひさらに力を強めていってほしいと思いますし、それから同時に私は具体的な施策というよりも、市の職員の皆さん方もぜひそういう集落に大いに入っていただきたいと思うんです。今私、新潟日報の連載で「ムラを編む」でしたか、あれ興味深く読ませていただいているんですが、きのう付のシリーズで神戸大学の重村力さんという学者の方が非常におもしろい話をされていましたです。そういう限界集落と言ってもいいと思いますけども、そこに住んでおられる皆さん方がなぜ住んでいるか。国土を守るとか、自然を守るとか、環境をどうするかと、そういったこと以前に自分がそこに住んでいないとほっとしない。自分はここにいるから自分なんだという気持ちと言われました。それが大事なんだという話しされましたが、そこまで踏み込んでぜひ皆さん方が理解してもらいたいと。市長さんは、吉川区の上川谷を既に2回訪れられました。市長さんがこういうことやります、ああいうことやりますと言ってくださるの非常にうれしいんですけども、顔を見ただけで皆さん方ほっとします。来てくださるだけで皆さん方安心します。ですから、49集落のうちほとんどが山間部の限界集落でございますので、ぜひそういうところを今年度訪ねて皆さん方の御要望をしっかり受けとめていってほしい。そのためにはだれか一人に任せるというんじゃなくて、私は担当部署をしっかり決めて、チームをつくって調査に入っていくということが必要だと思います。その点でどういう工夫をされていくのか、お答えいただきたいと思います。
 肺炎球菌ワクチン接種の問題、答弁を聞いてわかりました。全国で21の市町村で今公費の助成制度が行われておりますけども、これから広げていく上では市長が言われたような効果の面とか、費用対効果とか、いろいろな面でさらに研究を重ねながら進めていくということが大事だと思います。私は専門家じゃありませんので、それ以上言いませんが、そこら辺は尊重しながらぜひ肺炎で亡くなる人を1人でも減らしてもらいたい。私も身近な周りの人の中で、それこそあっという間に亡くなった人を何人も見てきています。ほとんど肺炎です。何でこの人が死なんきゃならんのかと思うようなスピードで死んでいく。そういったことが悲しみとしてみんなのところに残らないように、ぜひこの問題についてはしっかりと対応していただきたいと思います。
 3番目の問題、農業の振興で若干お話をさせていただきますが、私は約30年間牛を飼ってきました。米も10年間ぐらいつくったことがあります。私は日本共産党員ですけども、正直言いまして共産党員である前に長年の政府、農林水産省の施策については不信感を持っています。それについていったら必ずよくなるという気持ちになったこと一度もありません。いつも頑張って牛をふやしてももうからない。そういう目に遭ってきましたので、なかなか今度はこういきますよと言ったって簡単についていけない。同じ思いは党派を超えて、多くの市民の皆さん、農業者の皆さん持っているんではないでしょうか。だから、私はこの上越市の食料・農業・農村条例に掲げられた農業をやろうという意欲を持っている人みんなを支援するような、その考え方に立って新政策についても対応してほしいと思うんです。現実的な対応として、政府のやろうとしていることについて要件を満たすがために法人化の支援などいろいろやっていかれることについても私はいいと思います。ただ、それだけではなくて、そこにはいかないけども、何とか自分の農地を守って頑張っていこうという人たちにも援助の手を差し伸べていただきたい。そのことを重ねてお願いしたいと思います。その点について市長どのようにお考えか、いま一度御答弁をいただきたいと思います。
◎木浦正幸市長
 再度の御質問にお答えをさせていただきますが、まず1点目の限界集落について、先ほどの限界集落、あるいは中山間地域に住んでいらっしゃる方の昨日の新聞を引用されて、そこに住んでいるから自分なんだという大変目からうろこが落ちるようなお話でございましたけれども、そういったことを除雪担当者だけでその視点を、行政サービスを提供していく視点としてとらえるのではなくて、やはり横断的にさまざまな部署がその中山間地域に目をやりながら行政サービスの政策論、これを展開していく必要があろうかと思っておりますので、先ほど申し上げましたけれども、過疎対策あるいは少子高齢化対策、これなどを見据えたまちづくりについては重点施策の一つとしてこれまで取り組んできたことを申し上げましたけれども、これからも村が消えることのないよう横断的な組織を考えながらこれに対応できるようにしっかりと皆様方のニーズをお聞きして対応していけるだけの体制を整えてまいりたいと、このように思っております。
 2点目は、大きな項目の3点目の農業振興策での再度の御質問でございましたけれども、意欲を持った農業者に対して行政からの農業政策として支援と。これについては全く私もそのように思っておりますし、むしろ議員が問題点として披瀝をされた大きな担い手、認定農業者の方、農業者にはさまざまな規模ですとか、あるいはやり方等、平場、中山間地域、里山等の農業者の形態がございますけれども、まずは意欲を持った人たちの育成、そして支援というのは何よりも行政として待たれる支援でございますので、それをまずは一つきちんと押さえておかなければならないと、こう思っておりますが、そして小さい規模ながらもやはり多面的機能を発揮したり、あるいは自然保護につながったりして頑張っておられる農家の方もおられるわけでありますから、その方々とて意欲を持って農業に親しんでいらっしゃることは確かでございます。そういう意味では大農家と申しましょうか、そういうところだけを見ての議論ではなくて、広く全般的に上越市における農業形態にしっかり目をやりながらそれぞれ意欲を持っていただけるような農業施策、これがこの時代にとっては大切になってこようかと思っておりますので、それぞれ意欲を持って頑張っていただける農業者を育てながら、そして上越のブランド化に結びつけて、何よりも売れるおいしい米づくり、これが大切でございますから、統一したさまざまな農業のあり方について今後地域一丸となって考えていきましょうという提案をさせていただこうというふうに今準備をさせていただているところでございますので、これからは都市間競争に対して命をかけるぐらいのつもりで上越産米のブランド化、おいしいお米をつくっていただけるように、しっかりと意欲を持っていただけるような農業施策に結びつけてまいりたいというふうに考えているところでございますので、またさまざまなポイントにおいて御指導いただきますようにお願い申し上げたいと思います。
 以上であります。
一般質問一覧へ       トップページへ