吉川短歌会がこのほど合同歌集を出版しました。合同歌集は第2集です。会が結成されたのは32年前の12月。この間、活動を初めて13年後に第1集を出しています。歌集には15人の会員の「全生活実態を土台にして生み出された」285首が収められています。私は短歌については全くの素人ですが、私なりに良いなと思った歌を紹介したいと思います。
【飯川忠夫さん】
陽の光充ちて明るきウインドに妻へと惹かるる化粧の小瓶
【市村いしさん】
ぼんぼりに淡き灯が入りひなまつり老いの四人に楽しき一日
【上野成さん】
真っ直ぐに穂を揃えたる谷小田に細くなり来し水を分け引く
【大谷和男さん】
ランドセル背負いし孫がふと見せる幼きころの娘の姿
【杉田忠雄さん】
すり終えて米の袋を二度三度数を確かむ朝のひと時
【高野芳江さん】
事もなく元朝迎えしみじみと重なる歳の屠蘇を頂く
【田中久子さん】
早生稲の農林一号穂の出でてもう死なずともよしと亡き父言いき
【野呂千代さん】
生きおれば我も少しは役立つと懸命に生く老いてはあれど
【平野久子さん】
病室の夫に寄り添い長き夜の眠れぬままに海鳴りを聞く
【細井啓子さん】
寝返りを打ちては喜ぶ児が帰り片す布団に乳の香のせり
【細井博一さん】
労農ら火を見張りつつ畔を焼く尾神の棚田に春巡り来て
【真島香さん】
補聴器を付け初む夫は本当の鶯の声でなきと淋しむ
【松口トキさん】
村人は水引きし後の片付けを手伝いくるる小言も言わず
【栁澤美津子さん】
一升の餅を背負いて歩く児よ君の二十歳の空青くあれ
【山岸昭一さん】
正月に来る孫みんな大きくて居間の鴨居は低くなりたる