句集『よねやまさん』を県道新井柿崎線沿いにある朝日池総合農場の直売所、「むら市場」で入手しました。手にした途端、「こりゃ、いい本だ」と思いました。まず、装丁がいい。農家の主婦がはいていたモンペの柄と米山さんの雄姿が気に入りました。
句集の著者は大潟区内雁子の平澤トメ子(本名はトメ)さん、発行は息子さんで、朝日池総合農場社長の栄一さんです。句集は家族の力を結集して作られています。表紙の写真はトメさんのお孫さん、中扉のカットは栄一さん、栄一さんのお連れ合いは、「トメおばあさん」という一文を寄せています。
じつは、本の印刷を受けた「いんさつ たきざわ」の滝澤昭子さんから、昨日、手紙をいただきました。その中に、「何より心あたたまったのは奥さん(あさ子さん)の『トメおばあさん』の文章です」と書かれていたのです。どうしてもその文章を読みたくて、「むら市場」へ行ってきました。
「いつも平らな人、くよくよしないで前向きな人。ちょうど米山さんから昇るお天とうさんのような、それが我が家のトメおばあさんです」で始まる文章は、「実は畑こそおばあさんの俳句の宝島」、これからも俳句作りに励んでと結んであります。短いながらも心のこもった素敵な文章でした。
トメさんについては40年ほど前から私も付き合いをさせていただいています。若い時から短歌をやっておられ、新潟日報へも時々投稿されていました。普通の農家のお母さんでありながら、昔から、なんとなく知的な雰囲気が漂っている人でした。
句集はお昼休みに全部読ませてもらいました。亡くなったお連れ合いに対する想いがつよく出ている作品が思っていた以上にたくさんありました。農家の主婦としての生活感あふれる句もいくつもありました。私が気に入った句のなかから5句を紹介します。
三ヶ日 朝風呂に夫(つま) 上機嫌
屋根に干す 布団ふっとび 春一番
慰めて 介護の日々や 梅は実に
虹の橋 二人で渡り 夢はさめ
器量よし悪しと言いて大根引く
この本の中には短歌も15首掲載されています。その中で一番良かった歌、
杜氏として 夫出てゆきし 夜はさびし 時計の音と 吾子の寝息と
いかがでしたでしょうか。この句集をほしい方は、朝日池総合農場の直売所、「むら市場」(電話は025-534-5955)まで。