自治体研究社がこのほど発刊した『自治体農政の新展開』(中嶋信編著・1890円)を読みはじめました。同書は昨年出版された『集落再生と日本の未来』(自治体研究社)の続刊で、「集落だけでなく、地域農業を立て直すための農業政策のパッケージと推進の運動を明らかに」したものです。
うれしいことに、この本の第1章に上越市の取組が紹介されています。タイトルは「『農業がひかりかがやくまち』をめざす」。笹川肇農業政策課長と布施良之農業振興課長が執筆し、上越市の農政の骨格をコンパクトにまとめてあります。柱は、①上越市の農政の基軸となっている食料・農業・農村基本条例にもとづきどういう地域農業をめざしているか、②市の農政の状況、③担い手育成の仕組み、④関係機関の協働について、の4本。20ページ足らずの文章ですので、すぐに読めます。
読まれた方々は、おそらく上越市の担い手対策、環境保全型農業、中山間地農業の継続の取組などに注目してくださるものと思います。なかでも、市の取り組みに自治の観点が重視されていることにびっくりされるのではないでしょうか。「自治体農政の独自性とは、地域、地域の取組をアレンジしていくこと」「現場で施策を推進する場合、集落の機能・長い間培ってきたシステムを尊重することが大切です。そのシステムを変更するかどうかは集落が自ら考えることで、基本的にはそのシステムに行政は関与すべきではない」。こうした観点の重要性は、直接現場に入っておられる方はよくお分かりのことと思います。
この論文には新上越市が誕生してから6年間の担い手育成の状況が各区別にまとめられていますし、新規就農者の推移も11年間分が表になっています。これらのデータも貴重なものです。ぜひ、全国の農業者、農政関係者のみなさんに読んでいただきたいですね。