昨晩、コンビニに入って文芸春秋7月号を購入してきました。読みたかったのは井上ひさしの「絶筆ノート」です。5月に国際啄木学会の近藤典彦さんから講演していただきましたが、その際、石川啄木の短歌についての井上ひさしの解説、分析の素晴らしさを教えてもらいました。以来、井上ひさしの書いたものを次々と読んでいます。今回のノートにも何が書かれているのか、とても関心がありました。
「絶筆ノート」とユリ夫人の手記を読み、改めて井上ひさしのすごさを感じました。まず、メモです。「就寝前にハルシオン0.125ミリグラム」など具体的な治療の状況、医師の名前等をキチンと書き記しています。こういった調子ですから、戯曲をひとつ書くにも彼の資料収集はすごいというか、すさまじかったのではないかと思います。
ユリ夫人の手記に、「ことばを使うものとしての責任」というのがありました。「書いた以上は、自分のことばに責任をとる」「こんなに苦しいことを経験してみると、いままでの自分は、どこか観念的に『苦しさ』ということばを使ってきたと思う」という井上ひさしの言葉が紹介されていました。作家としての誠実さというよりも、作家としての執念を感じます。
「家で死にたい」という願いに応え、家族が病院側の協力も得て、家に帰らせてあげたのは4月9日の朝でした。そして、その日の晩にゆっくりと息を引き取ったとあります。意識はもうろうとしていても家に帰れた、よかったなぁ、と思います。夫人は私が知っている米原昶さんの子どもさんでもありました。「絶筆ノート」とユリ夫人の手記を読んで井上ひさしがまた近くなりました。
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