昨晩、上越文化会館で行われた「くびき野の歌」を観てきました。同館創立30周年を記念した市民による手づくりの音楽劇です。脚本は児童文学作家の杉みき子さん、作曲は阿部亮太郎さん、そして総合監督は上野正人さん。くびき野の大地やそこに住む人たちの魅力をどう描いてくれるのか、とても楽しみにしていた作品です。
くびき野には雪が降ります。今年は大雪でした。どうしても、「たいへんで、やっかいなもの」である点に目が行ってしまいます。でも、人生を振り返ってみれば、けっしてそうばかりではありませんでした。凍み渡りやスキーなど楽しい思い出がたくさんあり、雪に育ててもらっています。
今晩、子どもたちが最初の登場したのは、真っ白い衣装をまとった子どもたちでした。雪そのものとなって、飛び跳ねて、キラキラ輝いている。そうです、ここに生まれ育った者はみんな、雪の中を飛び跳ねて楽しむ「雪ん子」だったのです。
そして、やはり、「雪道」が出てきましたね。雪の一本道を歩く人々は譲り合いながら歩いてきました。これはくびき野に住む人の良さのひとつです。今晩は、この雪道を「横」から見ることができました。片方の足でよけて、人に道を譲る。いいもんですね。私にとって雪道は、毎朝大人たちが準備してくれた道でした。学校の帰り、郵便屋さんだけが歩いて残った足跡を頼りに雪道を歩いて帰った記憶もよみがえりました。
朝市で店を出している女性の一人だったでしょうか、「一年の良さは一年を通してでないとわからない」と言いました。その通りです。劇の中で、「いいな」「その通り」だと思ったセリフがいくつもありました。「今年の穂はキツネのしっぽのようになって、10俵獲れるわね」「カエルに手で触って命を手で感じる(ことが大事?)」「雪の底って青いのね。海みたい」「春が過ぎて、夏が過ぎて、秋が過ぎるとまた冬が来るんだよ。誰かがいなくなると誰かが戻ってくるもんさ。後戻りはしないもんさ、自然も人間も」。
そうそう、「急がず 休まず」という言葉も印象に残りました。『集落再生と日本の未来』(自治体研究社)で紹介した清里区櫛池農業振興会の前会長の小山文男さんが良く使う言葉も、「急がない 止まらない 無理しない」でした。「急がない」「休まない」はくびき野の人たちのすばらしい「個性」なのかも知れません。
大人役を演じた人たちも良かったけれど、今回の劇で大活躍したのは子どもたちと青年です。ふるさとに生き続けることを力強く宣言したゲン、テトラポットを体全体で見事に表現したリュウなど、このくびき野の大地を担ってくれる人たちの姿の中にくびき野の希望を感じました。
なかでも3年生の大地を演じた清水悠人くんが良かった。どうしてこんなに伸び伸びと演技ができるのかと、ずっと彼の姿を追いました。海で流されて一時はどうなるかと心配しましたが、生きていてくれて本当に良かった。この大地くんが劇の中で、こんなことを言いました。このくびき野は、「毎日、道草がいっぱいできる」から良いと。14市町村が合併して5年が経ったこの上越市、「もっとゆっくりと歩いて」、ふるさとの魅力を見つけたいと思いました。