父が帰らぬ人となった日、家族、親戚などで家の中の片づけをしました。その時は大忙しだったようで、どこへしまったか定かでないものもあります。きょうは母からの注文で、父が大事にしていた皮のカバンをさがしました。母によると、戦争中に使ったものだそうで、そのなかには母が宝物にしていたものも入っていたといいます。押入れ、牛舎などあちこちさがして、夕方には見つかりました。居間の戸のところにぶら下がっていたもので、私も見たことのあるものです。母はホッとしていました。
探しものをしていて、病院から持ち帰った品々も久しぶりに見ました。紙おむつ、ガーゼ、綿棒、椅子などじつにたくさんあります。病室の狭い物入れの中によく入っていたものです。
一つひとつのものを見ていると病室での父のことが次々と浮かんできます。それらの中のひとつに「アイ浄綿」という目の周りをふく専用の綿がありました。父の目ヤニをとるために、私が毎回のように使っていたものです。1包みを朝晩2回に分けて使っていたのですが、箱の中には封を切った包みが残っていました。父が死んだ当日の夕方に使うつもりでいたものです。ちょっと切なくなりました。
それにしても大量の紙おむつ、どうしたらいいものか。妻に話したら、1年4か月の入院期間中、ほとんど病室が一緒だったHさんにまず声をかけてみようということになりました。