たいしたもんです。法政大学のふたりの学生による論文発表会のことです。旧川谷校体育館できょう、地域の人々や大学の仲間たちなど70人ほどの参加のもとで行われました(画像)。
ふたりの学生は4年生の山岸拓さんと堀内しげみさん、「聞き書きによる農業と年中行事」というテーマで昭和30年代の川谷地区の農作業のことや行事などについてスライドを使って紹介しました。聞き書きをしたふたりにとって30年代の山村の暮らしは驚きの連続だったようです。牛や馬が農家の一員として大事にあつかわれていたこと、田植えでは女性の方が植えるスピードが速いことなどを報告すると会場では、うなづく人もいました。ふたりは、田んぼの畦にまで大豆が植えられるなど、地域農業が「いい循環で回っていた」ことも知ります。また、地域の暮らしの中に「結い」がしっかりと根付いていて、支えあいの伝統があることも浮き彫りにしました。
明るい陽射しが体育館に差し込み、スクリーンはよく見えませんでしたが、ふたりの心をこめた、丁寧な語りは会場に人たちの心をゆさぶりました(画像)。会場からは時々、拍手が起きたり、「本当のことだ」という声も出ました。発表後の感想を求められて石谷のSさんは、「自分史を聞かせていただいたような半日でした。希望が持てました」とのべましたが、地域の人たちはみんな同じ気持ちだったのではないでしょうか。
山間部はいま、「限界集落」といわれるほど高齢化が進んでいます。しかし、その集落に入ってみれば、自然や農業を大切にし、支えあいを重視した人間らしい暮らしの原点を見出すことができます。そこに焦点をあてたふたりに拍手を送ります。ふたりの学生には注文もありました。「小さい田んぼであっても農家は田んぼごとに名前までつけて大事にしていたことを付け加えて」「いまの農業がなぜこうなったかも調べてほしい」などです。最後に、山岸さんが言いました。「発表会をして良かったです。ぼくは絶対ここをつぶさない。ここを守っていくことを約束します」。胸が熱くなりました。