朝、「しんぶん赤旗」日刊紙の配達を終わって家に戻ると同時に電話がなりました。新潟市に住む学生時代からの友人Kさんのお連れ合いからでした。Kさんがいま、あなたと話をしたがっているので、と電話をしてきたのですが、声が震えています。Kさんに替わってもらい、「どうした、元気か。近いうちに会いに行くからな」と言ったら、「もうじきモルヒネを打つので、もうこれで話ができなくなるかもしれないと思って……」。もう、涙が溢れてきました。その後は、一言、二言話をして再びお連れ合いと替わってもらい、何とか都合をつけてお昼までには行くからと約束しました。
電話を切って、ふと思い出したのは、お連れ合いの言葉です。「8時半にはお医者さんが巡回に来る」。ということは、その時にモルヒネが入れば、出かけても話ができなくなっているかもしれない。そう思ったら、居ても立ってもいられなくなりました。朝食も食べずに、着の身着のまま軽乗用車に乗って高速道路を飛ばしました。新潟の中央インターに着いたのが8時35分、それからが時間がかかり、県立がんセンター病院に入ったのは9時少し前でした。
病室では、Kさんとお連れ合いが待っていてくれました。昨夜は痛くて眠れなかったのでしょう、いくぶん疲れた目でしたが、私を見てくれています。「来たぞ。間に合ってよかった」と言いながら、彼の手をギュッと握りしめ、再会を喜び合いました。お連れ合いの話では、私が来るというので、モルヒネは待ってもらったということでした。それから夕方まで、彼の家にパソコンをとりに行った以外は、病室にいました。学生時代のこと、慶応病院での免疫療法のことなどたくさん話ができました。驚いたのは、肩で息をするほど苦しみながら、「奥さん(体調を崩している)は大丈夫か」などと他人のことを心配していることでした。いったい、この男はどこまで優しいのか。Kさんはここ1週間が山場だといいます。何とか乗り切ってほしい。