昨年、県内でいち早く食育推進条例を制定したわが上越市で学校給食の民間委託の動きが具体的になってきました。給食の調理部門に限って民間委託の試行を城北中学校でやろうというのです。合併後の新市の学校給食の基本方針はまだ策定されていない。食育推進条例に基づく食育推進計画もワーキングチームが素案づくりをしているという段階です。こういうなかで一部門とはいえ民間委託を試行するというのは乱暴です。例えて言えば、住宅改築の設計図ができていない段階で台所の工事を始めるようなものです。あまりにも急ぎすぎではありませんか。
きょうの文教経済委員協議会で明らかになったことですが、民間委託の試行を急ぐ背景には、行革推進大綱に基づくコスト削減があります。児童生徒数401人~550人規模、調理員5人の給食施設では、年間906万円の歳出削減が見込まれるといいます。調理部門を民間委託しても、市の直営時と同様のサービスが維持できますと説明していましたが、主食ひとつとっても説得力がありませんでした。自校炊飯している施設がどうなるかなどに不安が残りました。給食調理員の人たちが学校経営に参加し、児童生徒とのふれあいのなかで仕事をしていくことも大切なことです。しかし、これは努力事項になっている。そして、これまで学校給食に関する各種会議で、市内に委託できる業者が見当たらないとしていたのに、ここにきて、委託業者選定にあたっては、市内に本社があることを盛り込んだ選定方針を打ち出す。首を傾げたくなることがいくつもありました。
食育基本法は、その前文において、食育は「生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきもの」としています。学校給食は、この食育を推進するもっとも重要な場のひとつです。そこでいま、上越市の学校給食の歴史に残る新たな取り組みが始まろうとしている。全国ですでに先行して民間委託をすすめている所からは問題ありの声がたくさん聞こえてきています。いま、ここで一番大事なことは、関係者がじっくり時間をかけて話し合うことではないでしょうか。城北中学校の主人公は生徒です。生徒はどう思っているのでしょう。今回の試行は市内のすべての学校にも影響を与えていきます。市内の保護者の皆さんはどう考えておられるのでしょう。いま一度書きます。急いではなりません。