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千の風

 足谷の伯母の告別式が終わったのは午前9時45分頃でした。それから出棺の準備をして、火葬場に向け、出発するまでけっこう時間がかかりました。外へ出て、玄関先で空を見上げたら、素敵な風景が見えました。すぐ隣の「イナバ」の屋敷の杉が天まで伸びていくようにすくっと立っている。そして、青い空の中を小さな雲が次々と流れていたのです。とても美しい風景なので、しばらく空を見続けてしまいました。ずっと見ていると、気持ちがすっきりする、元気が出てくる。不思議な感覚に陥りました。
 昨日、きょうと、照源寺の住職が話をされたのはチヨノ伯母さん向けの「千の風になって」でした。亡くなった人の骨をお墓に入れても、その人の思いは空から光となってやってくる。チヨノさんは自分の家の仕事だけでなく、お寺の行事でも活躍してくれた。ときたま人を笑わせるヒョウキンなところもあった。料理が上手かった人だ。若い時分の声を覚えているが、隣に座っているミツエさん(伯母の子)の声が同じなのでびっくりした。1人の人が亡くなっても、いろいろなことが伝えられ、つながって人間の歴史は続く。いま出されている料理にもチヨノさんの心が伝わっているのではないか。いいお話でした。
 きょう、最も感動したのはお斎の時の嵩治さんの挨拶でした。チヨノ伯母さんの子どもを代表してアサ子さんにお礼の言葉をのべたのです。「アサ子さんには9年間も母の面倒を見ていただきました。子どもを代表して…お礼を言いたいと思います。…ありがとう、ありがとう…」起立して挨拶を述べ始めた嵩治さんでしたが、涙で言葉が続きませんでした。「いえいえ、私なんか何も……」と手を横に振り、声をだすアサ子さん。みんなもらい泣きしました。わずか1分ほどの挨拶、心のこもった「ありがとう」の一言に感動しました。「ありがとう」は簡単に言えそうですが、なかなか言えないものです。私もこういう挨拶ができる人間になりたい。


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概要

2007年02月13日 00:00に投稿されたページです。

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