吉川町では2000年(平成12年)から翌年にかけてエッセイ集が3冊発行されました。そのうちの1冊は、酒屋さんのご主人が書かれた「夕日の小道」というタイトルの本です。出版後、数ヶ月たってから、出版記念祝賀会が開催されました。その時の実行委員会のメンバーが毎年正月に、この酒屋さんに集まって懇親会を開いてきました。ところが、その酒屋さんが今月いっぱいで店を閉じられるというので、恒例となった新年の懇親会を繰り上げて実施することになりました。きょうはその日でした。
会が始まってから、すぐに昔話で賑やかになるのがこの会の特徴です。きょうは、この酒屋さんの歩みが話題になりました。創業は大正年間、85年にわたる営業にはいくつものドラマがあります。大雪の時にソリを使って酒を運んだ話などのエピソードは、「夕日の小道」にたくさん書かれていますが、今回は、この酒屋さんの2階で行われた祝言のことが話題の中心でした。また、会場となった和室の柱にヒョウタンが飾られていたこともあって、私が「春よ来い」に書いた「ふくべ」の話でも盛り上がりました。
この酒屋さんは町の中心部、原之町にあります。ここでは、今年になってすでに1軒の雑貨店が廃業しています。この酒屋さんで、廃業は2軒目ということになります。経営者が高齢になっていて、後継ぎがいないこと、酒離れがすすんでいることが大きな要因でしょうが、市町村合併が店の歴史を閉じることにもつながったと聞いて複雑な思いがしました。参加者の一人が言いました。町の灯りがまた一つ消えることになる、と。