住井すゑさんのことを初めて知ったのは大学生の時でした。ちょうど『橋のない川』の第4部だか第5部が発刊されたころで、私も、全巻は読んでいないと思いますが、かなり読みすすんだ記憶があります。高校時代に島崎藤村の『破戒』を読んで衝撃を受けていましたから、部落や差別問題に関心があって、すっと入り込んでいった。そんな気がします。あの当時は、住井さんて、ものすごくやさしい女性だという印象が残っています。
柿崎町の長井泰雄町議に誘われて、きょう、記録映画『住井すゑ・百歳の人間宣言』を観にいってきました。上映前に児童文学者の杉みき子さんが挨拶でのべられたように、心にしみる言葉がいくつもあって、住井すゑさんという人間の魅力が十分伝わってくる記録映画でした。「やさしい女性文学者」というよりも「気骨のある哲学者」。私の彼女にたいする印象は、ここ30年くらいの間に大きく変わってきましたが、やさしいおばあちゃん顔で、腕組みをして話す映像をみたら、「怪物」と呼びたくなるような、すごさを感じました。
「天皇は国民の象徴だというんなら選挙で選べばいい」「いったん発言すべきところで発言しないと、とんでもないことになる」。こういった発言も90年以上生きてきた人ならではの重みがありました。大逆事件で殺された幸徳秋水のかたきを一生かけてとってやるという姿勢、膨大な資料を指をなめてめくり、徹底的に調べて、わかりやすく書く。記録映画を観たあと、住井すゑさんの作品をまた読んでみたくなりました。