2ヶ月ほど前、新潟市に住む地学研究者の大野先生からメールをいただきました。今年の夏も尾神岳で調査をやるから半日でも1日でも参加してみませんか、というお誘いでした。調査は、正式には米山団体研究会の調査で、略称米山団研といいます。団研は1963年(昭和38年)にスタートし、今回で第35次、スカイトピア遊ランドを基地にしての調査は昨日から始まっていて、26日まで続きます。
きょうはこの調査に朝から夕方まで同行させていただきました。米山と尾神岳には、急峻な山体がこぼれでたような「はり出し部分」がありますが、それが、いつ、どのようにしてできたか。山体をつくっている鮮新世の火砕岩層が下位層の上を滑ったのではないか。どうもそこには、きゅるんきゅるんした「鏡の肌」があるのではないか。今回の調査はそうしたことに注目したものです。
午前の調査は柿崎町黒岩地内の大きな露頭でおこなわれました。この露頭は、砕石業者の現場で見られるもの。ある先生は、「このくらいの露頭だといいねえ、けちな露頭じゃ全然わからん」と地層を削っておられました。
私には専門的なことは分かりませんが、明らかにずれがある地層やたまねぎの皮のようになった風化した岩石などが印象に残りました。専門家の先生方は、この露頭を詳しく調査し、泥岩の上を火砕岩が滑ったとおぼしき跡を見つけられたようでした。
午後からは、この露頭でみられた地層の動きを確認できる場所をさがして周辺の沢に入り、山を登りました。地表に出ている岩石をハンマーでたたいたり、元は田んぼだった縁を削ってみるなどの作業をしながら進みました。
注目すべき発見があったのは午後3時過ぎのことでした。「おい、あったぞ、泥だ」。その声を聞いて、みんながその周辺の地層断面をいっせいに削り始めます。畳1枚分くらいの広さの断面には、泥岩とその上にのった火砕岩の層がくっきりと浮かび上がりました。あとは、午前に見た露頭よりも下の方で、同じ構造の断面を見つけることができれば、結論付けができるとのことでした。
私が米山団研の調査に同行したのは、今回が2度目になります。山の中に入るのは疲れますが、とても充実感があります。それは大好きな尾神岳を科学の知識でより豊かにとらえることができるし、ワクワクするような大地のドラマを知ることもできるからです。例えば午前に見た大きな露頭は、大規模な柱状節理の上の方にあるのですが、そこで硫化水素をエネルギーとする海底火山域特有のシロウリ貝属の化石が出るという話を聞きました。深海に棲む生き物がマグマの動きで尾神岳のふもとまで押し上げられた。すごいなと思います。